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1. アルファ線核医学治療法プロジェクトの概要

近年、アルファ線放出核種を用いたがん治療法であるアルファ線核医学治療法の研究開発が国内外で盛んに行われています。アルファ線は、物質中での飛程が短く(細胞数個程度)、線エネルギー付与が大きい(通過した細胞に与えるエネルギーが大きい)という特徴を持っており、生体内ではアルファ線放出核種の近くにある細胞だけに大きなダメージを与えます。つまり、標識薬剤を腫瘍に集積させることができれば、腫瘍の周りにある正常な細胞に悪影響をほとんど与えることのない非侵襲性のがん治療が可能になると期待されます。

現在、アルファ線核医学治療に適していると考えられている核種は10種類あります。そのうちの一つ、ラジウム-223(223Ra)は、すでに日本でも2016年に治療薬(製品名:ゾーフィゴ)として認可されており、様々な病院で使用が始まっています。また、現在、世界的に最も注目を浴びている治療核種はアクチニウム-225(225Ac)で、ドイツのハイデルベルグ大学病院が主導している225Ac-PSMA-617などが先行して開発されています。PSMAはProstate Specific Membrane Antigen(前立腺特異的膜抗原)の略であり、前立腺特異性の高いマーカーですが、68Ga標識によるPETイメージングや177Luを標識した核医学治療薬と共にその有用性が報告されています。しかし、日本では、規制の面から225Acの製造が難しいのが現状です。

我々は、吹田キャンパスの核物理研究センターにある加速器(AVFサイクロトロン)を用いて製造が可能なアルファ線放出核種アスタチン-211(211At)に着目しています。211Atの半減期は7.2時間と短いため、通院治療が可能となることも期待できます。すでに、核物理研究センターで211Atを製造した後、ラジオアイソトープ総合センター吹田本館で分離精製、標識法開発、薬効薬理試験などを集中的に行っています。また、近い将来、阪大病院で医師主導治験を進める計画になっています。これらの一つ一つは非常に専門性が高く、むつかしい研究開発が要求されるのですが、我々は学内部局や学外機関と連携することによって、このプロジェクトを順調に進めることができています。まさに阪大でこそ実現できる「ワンキャンパスで自家製造からがん治療まで」を目指し、新しい放射線治療法の開発を総力を挙げて進めています。