研究プロジェクト
(放射線科学基盤機構)豊嶋 厚史
現在、核物理研究センターでは、K140 AVFサイクロトロンの増強工事が進められています。α線核医学治療法に用いる211Atは、この加速器を用いてヘリウム(4He)ビームをビスマス(209Bi)標的に照射する事によって製造していますが、加速器の増強によって4Heビームの量がおよそ一桁増加する計画になっています。具体的には、4Heビーム電流が1~2μAから20~30μAへと増強されます。我々はこれまでM実験室のFコースに自動照射システムを設置して211At製造を行ってきましたが、この照射システムではおそらく増強後のビームに対応できず、効率的に211Atを製造できないと考えています。そこで現在、照射システム全体の改造を進めています。問題となるのは、照射による発生熱のためBi標的や211Atが安定しない事ですので、冷却システムの効率化やビーム焦点の分散化を行っています。2021年春の加速器再稼働に合わせ、今年度中にこれらの新システムを完成させる予定で装置開発を進めています。
また、将来的には、211At製造専用のスケルトンサイクロトロンを導入する事が予定されています。この新型の加速器では、4Heビーム電流が500μAにもなると期待されていますが、逆に、改造後の照射システムでもこのビーム量に対応する事は難しいでしょう。そのため、今までの単純照射とは異なる新しい方法で211Atを効率的に製造する事を目指し、照射システムの概念設計を始めています。また、S実験室のJコースには、その新たな照射装置を設置するビームラインの整備を始めました。
さらにサイクロトロン棟に隣接するRI棟には、照射製造した211Atを取扱う新たな専用実験室の整備を進めています。今後、実験室の改装や設備の整備、ドラフトチャンバーや排気系の設置などを行う計画です。
(放射線科学基盤機構)角永 悠一郎
核医学化学実験室について、紹介します。核医学化学実験室は、ドラフトが2基、HPLCが2台設置されており、RI標識化実験や、標識化合物の精製・分析が行えます。
手前右側のドラフトでは、α線核医学治療薬剤候補である211At標識金ナノ粒子の合成を行っています。また、電解酸化反応を用いた、がんターゲティング分子の211At標識化を行っています。本反応は、毒性の高い試薬などを用いずに211At標識が可能なため、医薬品合成に向いています。
211At標識化合物の精製・分析は、手前右側のドラフト内と、手前左側に設置されているHPLCで行います。UVや放射能による化合物の定量が可能で、大変便利です。
奥側のカリフォルニア型ドラフトでは、大掛かりな装置を設置してのRI実験に向いています。現在は、開発した熱クロマトグラフ装置を設置して、211At化合物の揮発性の分析を行っています。
(放射線科学基盤機構)兼田 加珠子
核医学動物実験室は、ドラフトが2基、動物飼育装置1台(日本医化器械)が設置されており、主に短寿命アルファ線放出核種を用いた核医学治療薬の基礎動物実験を実施することができます。 また、動物用蛍光イメージャーやPCR機器(TaKaRa), Real time PCR機器(Thermo Fisher)、蛍光顕微鏡(キーエンス)、フローサイトメーター(Thermo Fisher)等の細胞実験の解析機器も整備しています。
手前右側のドラフトは、動物への核種の投与、核種投与動物の採材を行うためのものです。手前左側のドラフトは、標識抗体の調整や評価に使用されています。
(放射線科学基盤機構)白神 宜史
RI生物実験室(1)では、RI標識化合物の製造・品質試験および細胞を使ったインビトロ評価研究を行います。 特にアスタチン-211(211At)やアクチニウム-225(225Ac)などのα線放出核種による核医学治療薬の創薬研究に注力しています。実験室内には、ドラフト1基とバイオセーフティキャビネット1基が設置されています。
品質分析装置として、精密電子天秤、セルロースアセテート膜電気泳動装置、ナノドロップ(紫外可視吸光光度計)、恒温器(無菌試験およびリムルス試験用)などが利用できます。また細胞培養に用いるCO2インキュベーター、顕微鏡および細胞カウンターなどがあります。
RI生物実験室を含め当センター内の11室は、薬機法が定める信頼性基準下で運用されており、組織、施設および試験機器に関する標準作業手順書(SOP)がそれぞれ定められています。これら11室は、温度・湿度を常時モニターし、非臨床試験対応用として運用されています。機器類は日常点検により常に最適な状態で使用できるように整備しています。開発ステージにある薬剤は、この信頼性基準下で薬効薬理、薬物動態等の非臨床試験を行っています。
(放射線科学基盤機構)兼田 加珠子
核医学分析室は、核種投与サンプルの解析を行う室です。低エネルギーベータ線を測定する液体シンチレーションカウンター(ベックマンコールター)の他、核種投与動物の病理解析を行うための自動包埋機(サクラファインテック)、パラフィンディスペンサー(サクラファインテック)、ミクロトーム(ThermoFisher)、自動染色装置(サクラファインテック)、自動ガラス封入装置(さクラファインテック)、スライドプリンタ(松波硝子工業)等が設置されています。
本室は,薬機法が定める信頼性基準下で運用されており、試験機器に関する標準作業手順書(SOP)が定められています。温湿度は常時モニターされ、非臨床試験対応用として運用されています。機器類は日常点検により常に最適な状態で使用できるように整備しています。 必要な消耗品・試薬等は使用者がお持ちください。
(放射線科学基盤機構)兼田 加珠子
ドラフトが1基、ガンマカメラ(シーメンス社)、キュリーメーター(日立)、クリオスタット(Thermo Fisher)、血液解析装置(アークレイ)等が設置されており、核医学治療薬の基礎動物実験を実施することができます。 本室は、薬機法が定める信頼性基準下で運用されており、試験機器に関する標準作業手順書(SOP)が定められています。温湿度は常時モニターされ、非臨床試験対応用として運用されています。
個別動物飼育装置(日本医化器械)が設置されており、マウスおよびラットが飼育可能であり、放射線照射室で行われる核医学治療薬の基礎動物実験のための動物の維持に使われています。本室は、薬機法が定める信頼性基準下で運用されており、試験機器に関する標準作業手順書(SOP)が定められています。温湿度は常時モニターされ、非臨床試験対応用として運用されています。動物間のクロスコンタミを防止するため、利用希望者は管理者までご連絡下さい。
(放射線科学基盤機構)豊嶋 厚史
ラジオアイソトープ総合センター一階にある高レベル実験室1では、主に211Atの化学分離を行っています。この実験室にはドラフトが1基設置されており、その中に乾式蒸留分離装置を設置しています。そのため、核物理センターや理化学研究所などから211AtがRIセンターに輸送・移管されると、まずこの実験室で分離精製を行い、精製後に他の実験室で標識実験や動物実験が行われます。この実験室は排風量を大きくしてあり、ギガベクレルオーダーの211Atを使用できます。
(放射線科学基盤機構)豊嶋 厚史
ラジオアイソトープ総合センター一階の高レベル実験室2は、高レベル実験室1の奥にあります。ここでは、211Atの質量分析やレーザー分光化学実験を行う計画で、現在、除振台やレーザー照射装置、TOF質量分離機が設置されており、これから徐々に実験を本格化させるところです。また、この実験室にはドラフトが2基設置されています。この実験室も高レベル実験室1と同様に排風量を大きくしてあり、ギガベクレルオーダーの211Atを使用できます。
(放射線科学基盤機構)兼田 加珠子
TMICは医学系研究科附属未来医療イメージングセンターです。TMIC第6実験室は3Fにある共同利用実験室です。実験台(大)は60,000円/年、実験台(小)は50,000円/年で専有利用することができます。
当機構では第6実験室に次世代シークエンサーとDNAマイクロアレイシステムを導入しており、放射線核種で処理した核酸を用いた網羅的解析をすることが出来ます。それぞれの解析によって必要な試薬が異なりますので、利用を希望される方は解析に必要な試薬を別途ご用意下さい。
(放射線科学基盤機構)兼田 加珠子
1) 次世代シーケンサIon Proton™システム(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)【TMIC 第6実験室】
迅速なゲノムスケールのベンチトップ次世代シーケンサーです。
2) GeneChip Scanner 3000 7Gシステム(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)【TMIC 第6実験室】
発現解析からゲノム解析、薬剤応答や細胞遺伝学など幅広いアプリケーションに対応しています。
3) オールインワン蛍光顕微鏡 BZ-X810(キーエンス社製)【RIC吹田 核医学動物実験室】
暗室を使わない蛍光観察および透過光観察が可能です。
4) AttuneNxTフローサイトメーター(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)【RIC吹田 核医学動物実験室】
有効性と柔軟性の高いフローサイトメーターです。
5) In vivoイメージャー(インデックバイオシステムズ社製)【RIC吹田 核医学動物実験室】
小型のin vivoイメージャーです(緑・赤色蛍光のみ)。運搬可能です。
6) EMax Plusマイクロプレートリーダー(モレキュラーデバイス社製)【RIC吹田 核医学動物実験室】
吸光マイクロプレートリーダーです。
7) ティシューテック(サクラファインテック社製)【RIC吹田 核医学分析室】
回転式の自動包埋機です。
8) ティシューテックII(サクラファインテック社製)【RIC吹田 核医学分析室】
パラフィンディスペンサーです。パラフィン溶融機と共に使用します。
9) ティシューテック○RDRS2000(サクラファインテック社製)【RIC吹田 核医学分析室】
自動でHE染色等を行うことが可能な自動染色機です。
10) 滑走式ミクロトーム(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)【RIC吹田 核医学分析室】
パラフィン切片を薄切できます。
11) 標本ブロック加湿器(サクラファインテック社製)【RIC吹田 核医学分析室】
パラフィン切片を薄切する際に用います。
12) Multiskan FC(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)【RIC吹田 放射線照射室】
フィルタータイプの吸光マイクロプレートリーダーです。
13) クリオスタット HM525NX(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)【RIC吹田 放射線照射室】
凍結切片作製装置です。コンパウンドで包埋したサンプルの薄切ができます。
14) ユニバーサルコンパクトフロア型冷却遠心機(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)【RIC吹田核医学動物室】
ローターを変えることで、1.5mLマイクロチューブから50mLチューブまで使えます(スイングローター有)。
15) Thinka CB-1010 (Thinka社製) 【RIC吹田 放射線照射室】
自動血球計数装置です。全血および希釈血液が使用可能です。
16) スポットケムTM D-02 (アークレイ社製) 【RIC吹田 放射線照射室】
乾式臨床化学分析装置です。血中成分の解析が可能です。
17) VIP-5-Jr(サクラファインテック社製)【RIC吹田 核医学分析室】
密閉式の自動包埋機です。
18) パラフィン包埋ブロック作製装置(サクラファインテック社製)【RIC吹田 核医学分析室】
パラフィンを溶融し、包埋皿に分注する①エンべディングモジュールと②ブロックを作成するクライオモジュールで構成されています。
19) スライドプリンター(ESPO社製)【RIC吹田 核医学分析室】
スライドグラスに直接印字できるプリンターです。
20) 自動封入装置(サクラファインテック社製)【RIC吹田 核医学分析室】
独立型の自動ガラス封入装置です。
(放射線科学基盤機構)豊嶋 厚史
1) ゲルマニウム検出器(ミリオンテクノロジーズ・キャンベラ社製)、MCAシステム(セイコーEG&G社製)【低バックグラウンド室】
211AtのX線に対して高検出効率なGe検出器です。主に化学分離前後の試料測定に用いています。
2) ゲルマニウム検出器(ミリオンテクノロジーズ・キャンベラ社製)、MCAシステム(セイコーEG&G社製)【第二測定室】
211AtのX線に対して高検出効率なGe検出器です。主に標識合成実験などでの試料測定に用いています。
3) HPLCシステム(HITACHI製)【核医学化学実験室】
放射線検出器を備えたHPLCシステムです。211Atも測定可能です。
4) HPLCシステム(SHIMADZU製)【核医学化学実験室】
HPLCシステムです。こちらは放射線測定器は附属していません。ドラフト内に設置してあります。
5) ICP-MS(アジレントテクノロジーズ社製)【低レベルバックグラウンド室】
ICP-MSです。At試料に含まれる不純物の定量などに利用します。
6) ミリQ水装置(メルク社製)【共同利用実験室】
ミリQ水の作製装置です。蒸留水は購入したものを使っています。
7) グローブボックス(ASONE社製)【共同利用実験室】
グローブボックスもあります。これはRIセンターの所有物です。
8) イメージャー画像解析装置(GLサイエンスヘルスケア社製)【写真室】
イメージングプレートです。これはRIセンターの所有物です。
9) ガンマカウンター(パーキンエルマー社製)【第二測定室】
ガンマカウンターです。これはRIセンターの所有物です。